Data (翻訳出版データ) 2009/12
翻訳出版概況
[Data (翻訳出版データ)] Posted Date:2009/12/17(Thu) 10:44
日本にない“新しさ”を求めてビジネス、自己啓発、古典新訳、児童書が好調
書籍全体が振るわない中、業界のカンフル剤ともなりうる翻訳書。ファンタジーや韓流ブームは落ち着いたものの、翻訳書ならではの「新しい」視点をアピールし成功しているジャンルも多い。近年ヒットした翻訳書を見ていると、2005年『ダ・ヴィンチ・コード』(角川書店)、『グッドライフ』(ポプラ社)、2006年『ハリー・ポッターと謎のプリンス』(静山社)、『「頭のいい人」はシンプルに生きる』(三笠書房)、『3週間続ければ一生が変わる』(海竜社)、『日はまた昇る』(草思社)、2007年『ザ・シークレット』(角川書店)、『不都合な真実』(ランダムハウス講談社)、『誕生日大全』(主婦の友社)などが多くの読者に受け入れられた。翻訳出版は今、どのような流れにあるのだろうか。
児童書
2008年の目玉はなんといってもハリポタ最終巻の発売だった。『ハリーポッターと死の秘密(上・下)』(静山社)は、昨年7月に初版180万部で刊行、即5万部が重版された。99年から10年にわたり出版界を盛り上げてくれたビッグタイトルもこれで完結。大ヒットとともに翻訳ファンタジーの刊行が盛んになったが、成功といえるのは、『ダレン・シャン』(小学館)、『バーティミアス』(理論社)などに限られている。ハリポタ完結となった今、ポストハリポタを狙って同ジャンルの刊行が活発化している。
文芸
ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟(1~5)』(光文社古典新訳文庫)が累計100万部突破の大ヒットとなり、一躍注目をあびるようになった古典文学。名作古典復権の動きは、03年が契機だ。『ライ麦畑でつかまえて』(64年、白水社)を村上春樹が『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(03年、同)として新たに翻訳し直し、初版10万部で刊行した。村上春樹はこの後も、『グレート・ギャッツビー』(06年、中央公論新社)、『ロング・グッドバイ』(07年、早川書房)、『ティファニーで朝食を』(08年、新潮社)と新訳を刊行。
古典文学の復興には、“著作権切れになる作品”の活用という側面がある。パブリック・ドメインになったのを機に、名作を刊行しようという動きだ。近年では「星の王子様」として有名な「Le Petit Prince」の著者サン・テグジュベリ(1944年没)が05年にパブリック・ドメインに帰し、複数社から相次いで新訳刊行となり、マスコミでも大きく取り上げられた。
ちなみに、作家が第2次世界大戦の連合国民の場合、パブリック・ドメイン化には死後50年+戦時加算(開戦から対日平和条約発効日までの前日までの日数。約10年間)が必要となる。日本人作家の場合、現行法では50年だが、欧米並みに70年に引き上げようという声もある。パブリック・ドメイン化する作品が増えれば、名作の見直しが進むことは確実。優れたコンテンツの掘り起こしが期待される。